穏便に別れたい~別れさせ屋③
対象女性である大久保氏はこの日も漫画喫茶に出勤していた。
店内ではカウンター業務を行ったり、軽食を運んだり、各ブースの清掃を行ったりと
まじめに業務している。
今回の職場は長続きしそうだと依頼人澤田さんもホッとしていた。
さて、今回理沙氏に接触を行う工作員はSAYAさん(29才・元劇団員・元漫画家アシスタント・
漫画やアニメ全般に造詣が深い)という女性工作員である。
依頼人澤田さんからの追加情報によると、現在理沙氏が熱狂的に好きな漫画があり
単行本はもちろん、各グッズ、ネットの検索履歴もほとんどがこの漫画作品のものであった。
もちろんSAYAさんもその作品についてよく知っており、きっかけとして使用することとなったのである。
SAYAさんが理沙氏の勤務先である漫画喫茶に入店。
カウンターで理沙氏に受付してもらう。
SAYAさんの財布にはその漫画キャラクターのなかなか手に入らないキーホルダーがついており
それを見つけた理沙氏は「あっ!そのキーホルダー!」と声を出してしまう程だった。
SAYAさんは「オークションで落としたけど結構高かったんですよ、〇〇大好きだから気に入ってるけど。」
と答えると理沙氏は「〇〇最高ですよね~。」とニコニコしながら答えてくれる。
しばらく立ち話をした後、指定されたブースにSAYAさんは移動する。
2時間ほど漫画喫茶に滞在するSAYAさん。
隣のブースを清掃に来た理沙氏と、再び立ち話をして好きな漫画の推しキャラの話で
盛り上がる。
その時に今度ご飯でも食べに行こうという話になり、お互いのLINEを交換したのである。
SAYAさんのLINEのプロフィール画像には理沙氏の好きなキャラクターをアイコンとして使用している。
それを見た理沙氏は「感動っす!」とすごく喜んでいた。
接触を終えてお店を出たSAYAさんは、勉強熱心なのでもっとこの漫画の情報を集めるために、
別のネットカフェに入っていった。
この日、帰宅した理沙氏は興奮しながら「今日お客さんで〇〇好きな女の人が来てたから友達になっちゃった。」
ニコニコしながら澤田さんに話していたと、翌日担当員に連絡が入った。
理沙氏とSAYAさんのLINEのやり取りは朝晩問わず、この作品について盛り上がり、すっかり昔からの
友人ではないかという関係を構築していった。
第一段階は上々である。
食事に行く日程が決まり、その日に向けた打ち合わせを行う事となった。
次回、穏便に別れたい~別れさせ屋④へ続く。