春の訪れ~出会い工作④
工作員KENさんと対象者である宮本氏は各地の山々へ行く度に
信頼度が上がっていった。
というよりも、KENさんの山の知識を宮本氏が尊敬の念で
見るようになったのが非常に大きい。
この関係性で宮本氏のプライベートを聞くことは簡単であった。
宮本氏は学生時代に恋人はいたが、就職を期に別れることになってしまい
その後は一度も交際に至った人は出来なかったそうである。
盆や正月に実家に帰ると、親がいつ孫の顔を見せてくれるのかとか
恋人の一人も連れてこないねと言われたり、お見合いの話を持ってくることも
あったそうだが、最近は段々言われなくなってきたそうである。
昔の恋人を引きづっているわけでもなく、好きな人がいるわけでもないが
自分からアピールすることが苦手だし、仕事も決められたことさえしていれば
いいという性格なので、ズルズルとこの歳まで一人いることになってしまったそうである。
もちろんいい出会いがあれば歓迎ですけど、こんな私を好きになってくれるような
物好きはいないでしょうからね・・。と自虐的に笑う宮本氏。
KENさんは「そうかな、宮本君は物腰も柔らかいし、優しいからモテそうなんだけどね。
今度、他の山仲間も連れてくるから交流を深めてみてよ。」と言うと
「はい、KENさんのお仲間なら間違いないでしょうからね。頑張ってみます。」と
宮本氏は乗り気な態度で返事してくれた。
依頼人佐々木さんは比較的低い山を楽しむ練習を続けており、山登りで得られる達成感や
見たことのない風景の感動など少しずつではあるが、山が好きになってきていた。
そろそろ、仕上げに入るころである。
KENさんの山仲間の一人として、佐々木さんに登場頂くこととなる。
次回、春の訪れ~出会い工作⑤へ続く。