別れさせたい・対象者女性との関係構築|別れさせ屋④
依頼人村上さんはご自身の精神状況をコントロールする事に
苦心されていた。
彼と現在の彼女との関係を解消させて、村上さんと彼との関係を復活させたい
というのが最終的なテーマとなる。
しかし、その最終的な目標をわかっていながら、自分を裏切った彼を
どうしても許せなくなる瞬間や、今頃違う女と一緒にいると思っただけで
吐き気がするほどイライラする時間が出来てしまうのである。
そんな感情の時に彼へ連絡したら、どうしても村上さんの印象は
悪くなってしまう。
その為、どうしても自分を抑えきれないという時は、私に連絡を下さいと
担当員は言ってあった。
着手後半月ほどは毎日のように電話があったが、1ヶ月が過ぎた頃には
2日に1回、3日に1回の割合での連絡になってきた。
愛情の裏返し、可愛さ余って憎さ百倍など様々な言葉が当てはまるが
これまでにも感情が暴発して、取り返しのつかない行動をとってしまう方を多く見てきました。
人ですから強い自分を保てる時もあれば、弱くなってしまってどうにもならないという時も
あるのは当然です。
担当員への連絡の頻度が少なくなってきたという事は、少しずつご自身をコントロールできる
ようになってきている、ご自身に少しずつ余裕が出てきているという事になるのです。
さて・・・工作員MASAさんは、柳沢家で昼食をご馳走になってから一週間が経ちました。
この日は柳沢家での夕食に招待されている。
念の為、前日に「明日、ご招待頂いておりますが、ご迷惑ではないでしょうか?」と
恐縮しながら確認の連絡をすると、柳沢氏の母親が「主人はカレンダーに丸印をつけて
明日MASA君がいらっしゃるのを楽しみにしてるのよ、遠慮なんかしないでいらっしゃいね。
その日は娘もいるし。」と気さくに対応して頂いた。
この日は土曜日で招待されている時間は18時である。
娘である柳沢氏が在宅しているという事は、土曜になのに大森氏とのデートはない
という事になる。
さて、17:45柳沢氏自宅付近にスタッフたちが集合する。
工作員MASAさんは前回お邪魔させて頂いた際に
お父さんお母さん共に某店の佃煮が好きだと聞いていたので
手土産に某店の佃煮と、対象女性柳沢氏用に某店のお菓子を
持参していた。
そして17:57MASAさんが柳沢氏自宅のベルを鳴らす。
インターフォンではお母さんが「あっMASA君いらっしゃい、ちょっと待ってね。」と
応対してくれる。
しかし、玄関扉を開けたのは娘である柳沢氏だった。
「いらっしゃいませ、娘のまきです。先日は両親がお世話になったそうで、ありがとうございました。
さぁお上がりになって下さい。」と家に入るように促される。
部屋に通されると「おっMASA君来たな!」と笑顔の父親に迎えられる。
MASAさんは「これ、皆さんで召し上がって下さい。」と手土産を父親に渡す
「そんな気なんて使わなくていいのに・・あっこれ佃煮じゃないの、おい母さん
MASA君から佃煮を頂いたよ。」嬉しそうに報告する。
お母さんも「あら、本当だ、この前少しだけ話したのに、よく憶えてたわねぇ。」と
笑顔で言い、じゃあ早速頂いちゃいましょって言いながら、食卓に佃煮を加えた。
「それじゃ、絵友達MASA君との再会を祝して乾杯!」と父親が音頭をとって
夕食が始まる。
席順は和室に長方形の座卓、一辺に柳沢氏の父親と母親、
そして対面するようにMASAさんと、娘柳沢まき氏が並ぶ。
知らない人が見たら、結婚の挨拶に来たような構図である。
柳沢氏は「父が若い男性と嬉しそうに話すなんて珍しいんですよというか
初めてかも知れないです。」と笑顔で話しかけてくる。
MASAさんは「そうなんですか、何か公園でお母さんが大変そうにされて
いたんでお手伝いしただけなんですが、2回もご馳走になってしまって
何かスイマセン・・。」と恐縮した感じで話すと「MASA君はそんなこと
気にする必要ないんだよ。もちろん手伝ってもらった感謝もあったけど、
絵を描かれているという共通点もあるじゃないか。絵描き仲間みたいな
もんだと思ってくれよ。」と父親が話してくる。
「はぁ・・ありがとうございます。実はこの前お邪魔させて頂いた時に
何か実家に帰ってきたような感覚になったものですから・・。」と
「それでいいのよ。うちには息子が居なかったからちょうどいいわ」と
母親がおどけたように話してくる。
その後、和気藹々とお互いのことを話しながら時間が過ぎていく。
最初は緊張した表情だった柳沢氏も最後はMASA君と呼ぶようになり
すっかり打ち解けていた。
最後にMASAさんは持っていたスケッチブックに鉛筆で柳沢家3人の
スケッチを描いた。
「へぇ、うま~い。」と柳沢氏が感嘆の声を上げる。
柳沢氏の父親が「まき、MASA君と連絡先を交換しておきなさい。
うちの電話に連絡はしづらいだろうから、まきと連絡を取れるように
しておけば便利だろう。」と言うと、柳沢氏も「うん、そうね。」と言いながら
電話番号とアドレス、LINEなどの交換を行った。
「またお邪魔させて頂きます。」と言って柳沢家を出るのを見送ったのは
柳沢まき氏だった。
「両親も私もすごく楽しかったです。本当にまたいらっしゃって下さい。
あと、私は電話魔なんで頻繁に連絡しちゃうかもしれないですけど覚悟していて下さいね。」
と笑顔で送り出してくれた。
その日から柳沢氏からのメール攻勢が始まった。
電話魔だというのは本当らしく、毎晩のようにメールやLINE、直接の電話が
MASAさんに来ることになった。
そして、今度2人で飲みに行きましょうという話になり、デートの約束をするのだった。
次回、別れさせたい|別れさせ屋工作⑤へ・・続く。